事例132:訴訟提起により、資格勉強中だった被害者の将来性を考慮した逸失利益を勝ち取った

Dさん(34歳、男性)は、片側2車線の道路をバイクで直進中に、突然車線変更してきた乗用車と衝突し、バイクもろとも飛ばされ、転倒して全身を地面に強く打ち付けました。

Dさんは、救急搬送され、左上肢に強いしびれを感じていたものの、当初は「打撲」とのみ診断され、1週間ほどの安静を要すれば回復に向かうと言われていました。しかし、左上肢の痛みや痺れはなかなか回復せず、むしろ日に日に範囲は広くなり、また、手の皮膚の色や温感に異常がみられるようになっていきました。

整形外科では投薬や消炎措置などの治療が続けられるだけで、不安に思ったDさんは、事故から半年後、総合病院で検査を受けたところ、「CRPS(複合性局所疼痛症候群)の疑い」があると診断されました。その後、さらに精密検査をし、やはりCRPSであるとの確定診断がなされました。しかし、やっと何の病気か判明し、これから本格的な治療を受けようと思った矢先に、保険会社からは 「事故との因果関係が不明だ」として治療費を打ち切られてしまい、サリュにご相談に来られたのでした。

サリュは、Dさんには治療を続けてもらい、症状固定が近づくと後遺障害診断書の準備を始めました。CRPSを自賠責で認定してもらうには、後遺障害診断書だけでなく、その他の資料も揃えなければならず、きちんとした準備が必要です。

やがて、Dさんの後遺障害は12級13号と認定され、サリュは相手保険会社と示談交渉を始めました。サリュは、DさんはCRPSの症状により、労働能力にかなりの制限があることから、労働能力は当然67歳まで喪失するものとして、また、資格取得のために勉強をしていたことから、事故当時のアルバイトの収入額ではなく、平均賃金を基礎収入とする逸失利益を求めて交渉を始めました。しかしながら、保険会社は、Dさんの基礎収入は事故当時のアルバイトによる収入を基準とし、かつ、たった5年の労働能力喪失期間しか認めようとしませんでした。また、過失割合も当方がDさんの過失は1割であるとの主張に対し、保険会社は2割であると主張し、示談は決裂しました。

そこで、サリュは裁判を提起しました。裁判では、過失割合や、Dさんの逸失利益が何年認められるかという争点もさることながら、事故当時、資格勉強をしていてアルバイトの収入しかなかったDさんの基礎収入をいくらと考えるべきかにおいても争点となりました。

サリュは、主治医の意見書や、その他立証資料を収集し、Dさんには、将来もっと収入を得る蓋然性があったことや、左上肢の症状は重度で、労働能力に大きな制限を生じていることを主張していきました。

その結果、Dさんの労働能力喪失期間は32年、基礎収入は男子学歴計の賃金センサスの7割とした計算で逸失利益を算定、過失割合も1割との示談が成立し、最終的にDさんは治療費を除いて1400万円の賠償金を得ることが出来ました。

CRPSは、疼痛の部位が拡大していく病気ですが、Dさんは、これにより資格勉強の中断も余儀なくされた上、保険会社からの補償が打ち切られ、将来に大きな不安を抱えておられました。

しかしながら、裁判を経て、最終的には、資格勉強をしていたという事情が考慮され、将来、一定の収入を得る蓋然性が認められたことで、事故当時の収入より高い基礎収入で逸失利益を算定してもらうことができました。

Dさんは、適切な基準での示談ができ、また、過失割合も保険会社が主張するより低い割合で認めてもらえたことに、大変喜んで下さいました。

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