Aさん(40代前半男性)は、バイクで優先道路を走行中、側道から右折進入してきた車に衝突され、左上腕骨近位端骨折の傷害を負いました。
Aさんの左肩関節には可動域制限の症状が残り、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として後遺障害等級12級6号が認定されていました。ところが、保険会社からの賠償提示案は約235万円と適正な賠償には程遠いものであったことから、Aさんはサリュに相談に来られ、相談内容にご納得頂いた上でご依頼されました。
サリュは直ちに適正な賠償額を算出し、相手方保険会社に対して請求しました。これに対して、相手方保険会社は主に逸失利益について、特に労働能力喪失期間を7年と短縮する強気の主張で争ってきました。Aさんの後遺障害は肩関節の可動域制限であり、労働に対する影響が7年で消滅するわけはありません。さらに、Aさんには現実に事故後の収入の減少がありました。そこでサリュは、Aさんの収入が現実に減収していることを源泉徴収票等の客観的資料を基に証明しつつ、労働能力は原則通り67歳まで喪失したままであるという主張を、Aさんの怪我の態様、後遺障害の状態と類似の事件で労働能力喪失期間を67歳まで認めた裁判例を根拠に、粘り強く続けました。
その一方で、相手方の強気の姿勢から、サリュは示談交渉が無駄に長引く可能性があることを察して、直ぐに訴訟提起できるように準備を進めていました。Aさんは、話し合いで解決できればと、互譲の精神から金額面で一定の譲歩をされていましたが、保険会社の硬直的な主張は変わらなかったことから、サリュは直ぐに訴訟を提起しました。
結果として、訴訟提起後、第一回目の裁判期日の前に、相手方保険会社から示談の申し入れがあり、訴訟取り下げの手続きを経て示談が成立しました。金額としては、最終的にサリュとAさんが互譲の精神から提示した訴訟提起前の提案額の1.2倍になりました。示談合意の時期が遅れた以上、その部分に誠意を上乗せしてもらっています。Aさんは訴訟の口頭弁論期日を経ずに、スムーズに1000万円弱の示談金を得ることができました。
訴訟提起後、一回目の裁判期日前に訴えを取下げて示談がまとまったことについて、サリュはあまり不思議に思っていません。というのも、サリュの示談交渉での請求額の内容は、裁判例を十分に研究した、緻密な計算に基づく数字(請求額)です。裁判によって争いが終結する場合には遅延損害金というものが上乗せされる(もっとも、支払を受けるまでには相当の時間がかかります)ので、保険会社としては、結果として示談に応じていた方が全体の支払額を抑えられると判断したのだと思います。保険会社の最終的な検討において、示談に応じた方がメリットありとの判断に至ったのでしょう。そのぎりぎりのやり取りをサリュは緻密に計算していました。一般的には訴訟をすれば解決が長引くのですが、今回は訴訟提起が早期解決に繋がった成功例といえます。
Aさんは、当初の提示額の約4倍になる妥当な賠償額をスムーズに手にすることができ、大変満足していただけました。